「もしものとき、どうしたらいいんだろう?」と不安を抱える人は少なくありません。入院や入居の手続き、お金の管理、そして最期を迎えた後のこと。身近な人に頼ることが難しい高齢者が直面するこうした課題に対し、2024年にいくつかの自治体でモデル事業が開始されました。公的な支援と専門家の力を組み合わせた、各自治体の具体的な取り組みを見ていきましょう。
1. 東京都文京区:「文京ユアストーリー事業」
文京区は、高齢者の人生を多角的にサポートする「文京ユアストーリー事業」を展開しています。この事業の特徴は、法律家(司法書士など)と社団法人が連携する専門性の高いスキームです。
主な支援内容
- 総合的な支援: コーディネーターが公的サービスや民間サービスを組み合わせた包括的な支援プランを作成します。
- 緊急時の対応: 緊急連絡先の受託や、入院・入居時の手続きをサポートします。
- 死後事務支援: 病院費の清算、遺体や遺品の引き取り・処分、葬儀・納骨まで、死後の手続きを代行します。
この事業は、個々のニーズに合わせた柔軟な支援を提供することで、高齢者が安心して生活できるようサポートします。
2. 神奈川県川崎市:「川崎市未来あんしんサポート事業」
川崎市では、身寄りがない高齢者を対象に、川崎市社会福祉協議会が死後事務委任契約を締結する「川崎市未来あんしんサポート事業」を実施しています。
主な支援内容
- 希望に沿った死後事務: 生前に預託金を受け取り、利用者の希望に沿った葬儀や埋葬を実施します。
- 各種手続き代行: 亡くなった後の区役所への届出や、遺言執行も行います。
- 見守りサービス: 定期的な電話や訪問による安否確認を実施し、日々の生活を支えます。
この事業は、高齢者が自分らしい最期を迎えられるよう、事前に準備しておくことで不安を軽減することを目的としています。
3. 京都府京都市:「単身高齢者万一あんしんサービス」
京都市では、身寄りのない低所得の単身高齢者に焦点を当てた「単身高齢者万一あんしんサービス」を提供しています。京都市社会福祉協議会が窓口となり、死後事務委任契約を締結する形式です。
主な支援内容
- 葬儀の執行: 事前に葬儀に必要な費用を預託金として預かり、利用者の死亡時に葬儀を執行します。
- 見守り・安否確認: 定期的な電話や訪問で安否を確認します。
- 遺品整理: 遺品や家財の処分までサポートします。
2025年4月からは、持ち家にお住まいの方も対象になるなど、より多くの人が利用できるようにサービスが拡充されています。
4. 福岡県福岡市:「ずーっとあんしん安らか事業」
福岡市も、福岡市社会福祉協議会が窓口となり、「ずーっとあんしん安らか事業」を展開しています。こちらも死後事務の委任契約を結ぶ形式です。
主な支援内容
- 死後事務の代行: 事前に預託金を受け取り、利用者が亡くなった際に、葬儀や公共料金の精算、家財の処分などを行います。
- 見守りサービス: 契約後は、定期的な電話や訪問による見守りサービスも提供されます。
各自治体の取り組みは、それぞれ特色がありますが、共通しているのは「公的な機関が信頼できる窓口となること」です。これにより、サービスの透明性が確保され、高齢者が安心して利用できる環境が整えられています。ただ、事前に費用を預託して、その費用の範囲内で葬儀と死後事務のみを行うため、遺言執行者は別途頼まなければいけません。また、あくまで緊急連絡先だけを引き受けるため、身元保証(身元の引受)までは行っていないようです。
こうしたモデル事業は、住み慣れた地域で最期まで安心して暮らせる社会の実現に向けた、重要な一歩と言えるでしょう。お住まいの地域で同様のサービスが始まっていないか、ぜひ一度調べてみてはいかがでしょうか。残念ながら練馬区周辺自治体では、これらの類似事業はおこなわれていません。一般社団法人ねりま終活身元保証センターでも、そういった悩みをお抱えの高齢者のお手伝いをしています。自治体等の公共機関ができないことまで、できるだけサポートしていきたいと考えています。