マンション管理士として多くの現場を見てきましたが、今回の区分所有法改正により、規約改正のハードルは劇的に下がろうとしています。
これまでは「一度決めたら10年は変えない」のが通例でしたが、これからは「5年に1度(長期修繕計画の見直し時)」や、毎年の「標準管理規約の改定ごと」にアップデートしていくのがスタンダードになるかもしれません。
今回は、私が実務で行っている「AIをフル活用した効率的な規約案作成フロー」とそのコスト感について公開します。
1. 規約は「独自色」を出しすぎないのが正解
多くの規約を見てきた結論として、独自の条文は少なければ少ないほうが良いと考えています。もちろん「転ばぬ先の杖」としてなんでも規約に盛り込むという方法を否定するわけではありません。どちらも一長一短です。独自ルールが少ないメリットとしては、
- コミュニティの息苦しさを解消: ルールが多すぎるとコミュニティが硬直化します。
- 資産価値の維持: 独自ルールが多すぎると、新規参入者(中古購入者)が理解するハードルが高くなります。シンプルな規約は、流動性を高めることにも繋がります。
条文番号は「標準管理規約」に統一すべき
改正時に最も重要なのが、標準管理規約と条文番号を極力一致させることです。
もし現行規約の番号がズレている場合は、「第〇条の2」などを駆使してでも統一してください。ここを揃えておかないと、将来の改正時に毎回膨大な手間(コスト)が発生してしまいます。
2. 規約改正の「コスト構造」を分解する
管理士に依頼すると通常30万〜50万円ほどかかる規約改正ですが、その費用の主因は「理事会・総会での質疑応答や合意形成の調整」という人件費です。
業務内容と工程の目安
| 項目 | 内容 | 工程目安 |
| ① 現状分析 | 現行規約・細則の読み込み、ヒアリング | 1~2日 |
| ② 案の作成、修正 | 標準規約との比較・独自ルールの反映 | 1~3日/回 |
| ③ 修正・決定 | 理事会での質疑対応・修正 | 0.5日/回 |
| ④ 総会対応 | 組合員への説明・質疑応答 | 0.5日 |
士業の日当(経費込)を10万円とすると、3.5〜4.5日工程で35万〜45万円程度が最低ラインとなります。
「案の納品のみ」なら10万円も可能?
もし「理事会・総会対応なし、現行規約のデータ化済み」という条件で、「新管理規約の作成のみ」を請け負うのであれば、10万円(1日工程)での受託も十分に現実的だと考えています。
3. AIを駆使した「爆速」規約案作成フロー
人間(管理士)が行っていた膨大な「突き合わせ作業」をAI(NotebookLM等)に代替させることで、精度を上げつつ時間を大幅に短縮できます。
- ステップ1:まっさらな「最新標準管理規約」を作る国交省HPから最新データをDLし、不要な改ページなどを削除して整形します。(2〜3時間) 住宅:マンション標準管理規約 – 国土交通省
- ステップ2:現行規約との比較・独自項目の抽出 現行規約を1条ずつチェックし、標準規約から変更すべき箇所を修正していきます。
- ステップ3:AIによる表記統一 AIに標準管理規約のトーンを学習させ、修正条文の表現を統一。規約全体の整合性を保ちます。
- ステップ4:抵触チェック(AIの得意分野)「規約内の他条文」や「細則・別表」と矛盾がないかをAIに確認させます。人間なら数日かかる作業が数分で終わります。
- ステップ5:最難関の「新旧対照表」作成 GoogleのNotebookLM等を使えば、適切な指示により5分程度でベースが出力されます。かつて数日かかっていた作業が、確認作業を含めても半日程度で完了します。
4. 結論:管理規約は「クラウド」で育てるもの
「どれが最新の規約かわからない」という問題は、有効な規約をクラウド上で常時公開し、組合員がいつでもアクセスできるようにすれば解決します。
「多少の知識」と「AI」があれば、規約改正案の作成はもはや特殊技能ではありません。
- 管理組合が自ら案を作り、管理士は「法的な最終チェック」のみを行う
- 管理士が「案」だけを安価に提供し、検討修正は理事会で行う
このような低コストで機動力のあるマンション管理が、これからのスタンダードになっていくでしょう。
まとめ
管理士の仕事は「書類を作ること」から、作った案の妥当性をAIが判断し、合意形成をサポートすることへシフトしていくのではないかと思料しています。
規約を常に最新の状態に保つことは、マンションという共同体を守るための、最もコストパフォーマンスの良い投資のひとつです。

