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リゾートマンションの公売物件はなぜ危険か?「負動産」である理由を湯沢町苗場の物件で解説

不動産公売は、市場価格を下回る物件を取得できる魅力的な機会ですが、リゾートマンションのような特定の物件には、安易な購入を避けるべき重大なリスクが潜んでいます。

かつてのスキーブームを背景に、湯沢町には多くのリゾートマンションが建設されました。しかし、ブーム終焉後、その多くが利用されなくなり、維持管理コストだけがかさむ「負動産」の代表格としてメディアやyoutubeなどで紹介されることが多くなりました。本稿では、現在KSI官公庁オークションに掲載されている湯沢町の物件「シェスタ苗場」を具体例に挙げ、リゾートマンションの公売物件を検討する際に注意すべき点を詳細に解説します。

「シェスタ苗場」公売物件の事例から読み解くリスク

以下は、現在KSI官公庁オークションに出されている湯沢町の物件「シェスタ苗場」の情報から、投資家が読み取るべきリスクをまとめたものです。

外観:シエスタ苗場公式HPより

【オークションスケジュール】

  • 参加申し込み受付期間:2025年7月11日13時0分 〜 2025年7月29日23時0分
  • 入札期間:2025年8月5日13時0分 〜 2025年8月12日13時0分

(参考:KSI官公庁オークション https://kankocho.jp/items/56006

項目内容
所在地新潟県南魚沼郡湯沢町大字三国字上ノ山
物件名称シェスタ苗場
専有面積2階 21.73平方メートル(1R)
建築年月平成2年11月(築34年)
物件価格168,000円
保証金20,000円
主な設備大浴場、クアハウス、スキーロッカー、駐車場、コインランドリーなど
月額費用管理費12,320円、修繕積立金3,010円(合計15,330円)
未払い管理費等買受人に請求しないとの特約あり
引渡し条件現況有姿、鍵は引き渡しなし、設備不具合は自己負担
リスク特記事項契約不適合責任は一切負わない、占有者や残置物の処理は買受人自身が行う

なぜリゾートマンションは「負動産」なのか

リゾートマンションが「負動産」と言われるのには、以下のような明確な理由があります。

まず、公売価格と一般市場価格の差がわずかであることを見てみましょう。

現在、「シェスタ苗場」の物件は、一般の不動産市場で以下の価格で売り出されています。

公売物件価格の168,000円は、一般市場の価格よりは安価に見えます。しかも競売公売マンションの大きなデメリットである滞納した管理費修繕積立金が免除されているので魅力的です。でも、しかし……、です。落札できたとしてもその差はわずか。そして、その安価な物件に対し、月々15,330円という高額な管理費や修繕積立金が継続してかかり続けることを考えると、資産として成り立たせることは非常に難しいんです。公売物件として安く見えても、リゾートマンション市場全体が低迷しているため、公売のメリットがほとんどないのが現実です。

さらに、以下のような根本的な問題も存在します。

  1. 利用価値の低下と供給過多 スキーブームの終焉とともに利用者が激減しました。膨大な数のリゾートマンションが市場に供給されたまま、需要が著しく不足しています。そのため、売却しようにも買い手が見つからず、資産価値がほぼゼロに近い状態に陥っています。湯沢町のリゾマンはその代表例としてあげられ、特に交通不便な苗場地区がもっとも需要が少ないと言われています。(もしかして、ひょっとしたら、万が一……、ニセコや白馬のようにインバウンド需要が高まったら……という、かすかな希望はありますが。)
  2. 高額な維持管理コスト 豪華な共用施設(大浴場、クアハウスなど)は、利用者が少なくても維持管理費用が発生し続けます。これらの費用はすべて所有者が管理費・修繕積立金として負担するため、使わない物件の維持コストだけが重くのしかかります。
  3. 建物の老朽化と大規模修繕 築30年以上が経過し、建物の老朽化が進んでいます。今後の大規模修繕には多額の費用が必要となりますが、多くの所有者が負担を拒否するケースも多く、資金計画が破綻しやすい状況にあります。修繕積立金が不足している場合、臨時徴収として一度に高額な費用が請求されるリスクがあります。
  4. 売却時の買い手が見つからない 物件を売ろうとしても、上記の理由から買い手はほとんど現れません。結果として、売却価格は著しく低くなり、最悪の場合は買い手が全く現れず、物件を手放すことすら難しくなります。

公売物件の購入はなぜ慎重になるべきか

さらに以下のような点にも注意が必要です。

  • 契約不適合責任の完全免責: 公売では、物件に隠れた欠陥(契約不適合)があっても、売主である行政機関は一切の責任を負いません。老朽化が進むリゾートマンションでは、設備の故障や建物の欠陥が隠れている可能性が高く、取得後に多額の修繕費用が発生するリスクが大きくなります。
  • 残置物撤去の費用と手間: 公売物件は「現況有姿」での引き渡しとなるため、前所有者が残した動産類(残置物)は買受人が自ら処分する必要があります。公売においては、占有者がいる場合は、交渉に応じなければ裁判所の強制執行の申し立てを行うことになります。しかし、公売には競売のような明け渡し命令制度がないため、この手続きには時間も費用もかかります。強制執行の裁判費用や弁護士費用を考えると、一般の不動産市場で40万円や50万円の物件を買った方が、結果的に安上がりになる可能性が高いのです。
  • 未払い管理費等の免除の裏側: 公売情報に「未払い管理費等を請求しない」という特約があることは、公売の買い手を増やすための管理組合側の配慮です。しかし、本来は買受人が承継義務を負うものです。この特約がなければ、多額の未払い金を支払わなければならないリスクが存在します。

まとめ

湯沢町のようなリゾートマンションは、一見安価に取得できる公売物件として魅力的に映るかもしれません。しかし、その背後には売ろうとしても売れない「負動産」という本質と、公売特有の契約不適合責任免責という大きなリスクが潜んでいます。

公売物件への入札を検討する際は、物件の物理的な状態だけでなく、その立地や市場性、そして取得後にかかる全ての費用を徹底的に分析し、「安く買える」という誘惑の裏に隠されたリスクを正確に見極めることが、不動産投資の成功には不可欠です。