「自分が亡くなった後、残された家族が葬儀費用や生活費で困らないようにしたい」 そう考えたとき、有力な選択肢となるのが銀行や信託銀行が提供している「遺言代用信託(ゆいごんだいようしんたく)」です。
一見すると万能に見えるこの仕組みですが、実は終活のすべてをカバーできるわけではありません。本記事では、遺言代用信託の基本的な仕組みから、制度の歴史、実際の「使い勝手」、そして注意すべき落とし穴について分かりやすく解説します。
遺言代用信託とは?(基本的な仕組みと歴史)
遺言代用信託とは、生前にまとまった現金を金融機関に託し、「自分が亡くなったら、指定しておいた家族(受取人)に一括、または定期的にそのお金を支払う」という契約を結ぶ商品です。
通常、人が亡くなると銀行口座はすぐに「凍結」されてしまい、遺産分割協議が調うまでは遺族であっても自由にお金を引き出すことができなくなります。しかし、遺言代用信託を利用していれば、遺言書がなくても、また口座凍結に関係なく、数日から1週間程度でまとまった現金を受け取ることができます。
いつできた制度なの?
現在の遺言代用信託のベースとなる「信託法」が大幅に改正されたのは2007年(平成19年)9月のことです。この法改正によって、個人がより柔軟に信託の仕組みを利用できるようになりました。 その後、2010年代前半にかけて大手信託銀行などが相次いでパッケージ商品(「ずっとあんしん信託」など)を発売し、高齢化社会の進展とともに「手軽にできる終活のファーストステップ」として広く定着していきました。
遺言代用信託の3つのメリット
1. 家族がすぐに現金を受け取れる
最大のメリットは「スピード」です。葬儀会社の支払いや、病院・施設の精算など、死直後はまとまった出費が重なります。遺族は死亡診断書などの必要書類を提出するだけで、スピーディーに現金を手に入れられます。
2. 遺言書を作るよりも手続きが手軽
公正証書遺言などを一から作成する場合、公証役場との調整や士業への報酬など、相応の手間と費用がかかります。一方、遺言代用信託は銀行の窓口で比較的スムーズに手続きを完了できます。
3. お金の「渡し方」をコントロールできる
「一括」で渡すだけでなく、「毎月10万円ずつ」のように分割(定期給付)で渡す設定も可能です。残された配偶者の生活費、あるいは未成年の孫の教育費として、計画的にお金を使ってほしい場合に有効です。
ここが落とし穴!知っておくべき「使い勝手」とデメリット
手軽で便利な遺言代用信託ですが、終活の実務においてはいくつかの「超えられない壁」が存在します。ここを理解していないと、いざという時に「こんなはずじゃなかった」と後悔することになります。
× デメリット1:受取人は「原則、親族のみ」
多くの金融機関において、遺言代用信託の受取人に指定できるのは「配偶者および一・二親等以内の血族(子どもや孫など)」に限定されています。 そのため、以下のようなケースでは利用が極めて難しくなります。
- 内縁の妻やパートナーにお遺ししたい
- お世話になった友人や、特定の団体に寄付(遺贈)したい
- 「死後事務委任契約」を結んだ行政書士や専門家に、死後事務の費用として直接託したい
× デメリット2:預けられるのは「現金」だけ
遺言代用信託の対象となるのは、原則としてその銀行に預ける「金銭(現金)」のみです。自宅などの不動産、株式、こだわりのお宝(動産)などを「誰に譲るか」を決めることはできません。これらを指定したい場合は、やはり「遺言書」の作成が必要です。
× デメリット3:遺留分のトラブルは防げない
特定の子どもだけに多額の信託金を設定した場合、他の兄弟から「不公平だ」と不満が出ることがあります。法律上の「遺留分(最低限もらえる遺産の取り分)」を侵害していると、後に親族間で泥沼のトラブルに発展するリスクがあります。
死後事務委任や身元保証でお悩みの方へのベストアドバイス
身寄りがない方や、家族に負担をかけたくない方が「死後事務委任契約」を結ぶ際、「死後事務の費用を銀行の遺言代用信託でプールしておこう」と考えるのは、前述の『親族限定のルール』があるためお勧めできません。
士業や専門機関に死後の手続きを託す場合は、銀行の遺言代用信託ではなく、「信託会社等を利用した専用の預託金管理スキーム」や「遺言書の作成(遺言執行者の指定)」を組み合わせるのが、現在最も確実で安全な方法です。
まとめ
遺言代用信託は、「残された家族に、葬儀代などの現金を大至急届けるためのピンポイントなツール」としては非常に優秀です。
しかし、不動産の処分、親族以外への財産移転、 shadow(影)のように煩雑な死後の手続き(死後事務)まですべてをシームレスに解決したいのであれば、遺言代用信託だけでは不十分です。
お客様のご家族構成や財産の状況、そして「どのような最期を迎えたいか」によって、最適な組み合わせは一人ひとり異なります。当センターでは、遺言、信託、死後事務委任の中から、あなたに最も適したオーダーメイドの終活プランをご提案いたします。まずはお気軽にご相談ください。
首都圏の主な実施金融機関(参考リンク)
首都圏で利用可能な、主な金融機関の遺言代用信託商品です。詳細な規約や手数料などは各行の公式ページをご確認ください。
- 三菱UFJ信託銀行 商品名:ずっとあんしん信託 https://www.tr.mufg.jp/shisankanri/zuttoanshin.html
- 三井住友信託銀行 商品名:家族おもいやり信託(遺言代用型) https://www.smtb.jp/personal/consul/trust/lineup/omoiyari
- みずほ信託銀行 商品名:みずほ遺言代用信託 https://www.mizuho-tb.co.jp/personal/trust/igondaiyou.html
- りそな銀行 / 埼玉りそな銀行 商品名:遺言代用信託(マイドクター) https://www.resonabank.co.jp/nenkin/shintaku/mydoctor.html

